彼は軽金属の階段を登り切って、旅客機の中へ姿を消した。もうどうしようもなかった。

「乗組員が皆死んでしまったのは、どういうわけですかね」 ケノフスキーが何かいいだそうとするのをドレゴは抑えて、「せっかく丈夫な船が出来たにしろ、乗組員がその場で全部死んでしまうんでは、買い手がつかないですからなあ」「いや、あれは当時乗組員用の衝撃緩和装置が間に合わなかったせいだよ。何しろ試運転を急いだものだから……今ならその安全器械は十分間に合うのだ」「一体あの事件のとき、ゼ号の乗組員はどういうわけで死んだんですかね。いやもちろん激しい外力によって、壁に頭をぶつけ、脳震盪《のうしんとう》[#「脳震盪」は底本では「脳震蕩」]を起こしたんだろうと想像していますが、それにしてもゼ号をあのように高い山の上へ吹き飛ばした外力というものは一体何物だったんですか」「そのことだがね。これは慎重な態度で取扱わねばならぬ問題だが、とにかく巨大なる外力が働いたことは確かであるし、それは海において発生したものであること……」「それは原子爆弾にやられたんですか」「そこが、その微妙なところで……実はこういう話があるんだが……」 その先をいいかけたとき、飛行場のサービス嬢が、旅客機の修理が終ってすぐ出発しますから、すぐ乗っていただきますと觸《ふ》れて来たので、ケノフスキーは周章《あわ》ててドレゴの方へ手を振って、飛行機の方へ駆け出した。「ケノフスキーさん。貴方は何の用でどこへ行くんですか」 ケノフスキーは答えるかわりに手を振った。「いつ帰って来ますか」「後で詳しく手紙にして送る。さよなら。さよなら」 彼は軽金属の階段を登り切って、旅客機の中へ姿を消した。もうどうしようもなかった。

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