ホーテンス記者と水戸記者は、その計器を覗き込もうとしたが窮屈な潜水服をつけているので、それは見えなかった。

現場近接

 海底へ下りたワーナー博士一行十名は人員点検をして異状のないことを確かめた上で、一団となって進発した。 五個の強力な灯火が前方を明るく照らしている。ここはいわゆる海嶺《かいれい》というところらしく、ゆるやかな起伏のある丘をなしていて、歩くたびに海底の軟泥《なんでい》は煙のようにまいあがる。 博士の助手の一人は、超音波の装置を胸にかけて、前方を、この聴こえない音波で摸索している。 二人の護衛は、最前列に出て左右を確かめつつしずかにあるいている。 ホーテンス記者と水戸記者はワーナー博士のすぐ後ろにぴったり寄り添うようにして歩いている。博士の右隣には、博士の信任の篤いオーキー学士が、水中電話機を背負って、たえず水面に待機している掃海艇サンキス号と電話で連絡をとっている。そのオーキー学士の声が海水を伝わって水戸記者の耳にもよく入る。「……一行異常なし。針路を南西にとっている。軟泥と海藻の棒だ。前方に何があるか、見当がつかない……」 オーキー学士はしきりに喋っている。 ワーナー博士の方は、点々として、ゆるやかな歩調で歩いていく、一群幾千とも知れぬ扁平な魚の群が、無遠慮に前方を横ぎり、そしていずれへともなく姿を消す。 昆布の林を一つ、ようようにして通抜け、ひろびろとした台地のようなところへ出た。ワーナー博士は、さっと手をあげ、合図の笛を吹いて一同に「停れ」の号令をかけた。 そこで底へ下りて最初の測定が始まった、器械や装置が並べられる、特別の照明が行われる、ワーナー博士がプリズム式の屈折鏡で計器の針の動きを覗《のぞ》き込む。 ホーテンス記者と水戸記者は、その計器を覗き込もうとしたが窮屈な潜水服をつけているので、それは見えなかった。

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